薬膳の基本

薬膳と言うと難しいと思いがちですが、すべての食材には効能があります。

バランスよく食べ、季節や体質、体調に合わせて食べることが栄養を効率良く

取り入れられると言う薬膳の素晴らしさです。

 

現代の栄養学では三大栄養素・五大栄養素・七大栄養素などと分けていますが、

薬膳では食材を5つの性質に分け「五性」と5つの食味で分け「五味」とし、

それぞれの効能と組み合わせを考えていきます。

「五性」「五味」は薬膳の基本です。

 

陰陽五行

「陰陽」・すべての自然現象はふたつの相反するものの組み合わせから成り立っている。

太陽と月、昼と夜、夏と冬、男と女など、お互いに作用しながら成り立っている。

食べ物も、「陰」体を冷す食物、「陽」温める性質の食物と考え、バランスが健康に関係あると考えます。

 

「五行」・万物は5つの要素によって成り立っている。

「木」「火」「土」「金」「水」どれも欠けてはいけなくて、それぞれの存在を助け合ったり(相生)、

抑制し合ったり(相克)してバランスをとっている。

 

例えば、「水」は「火」を消す相克関係ですが、「水」は「木」を養うので相生関係になり、

この関係は臓腑と味の関係でも使われます。

「水」の性質を持つ「腎」は体内の水分調節の役目の臓器、腎のパワーを高めるときは塩味をとると効果的。

とり過ぎは相克関係の「心」に悪影響を与えてしまう。など

また、「肺」の機能を高めるときは辛い物を、「肝」の機能を高めるときは酸っぱいものをとると、効果的となります。

 

「木」樹木が成長、のびやかな性質、強い生命

「火」燃焼するときの炎が立ち上るような瞬発的な力

「土」大地、万物を育み、豊かな力

「金」金属のような他を寄せ付けない、鋭い

「水」液体、下方に向かって流れ、冷やし、潤す

陰陽五行では人間の臓・腑も5つに分けます。

「五臓」は肝、心、脾、肺、腎の5つ。

「五腑」は胆、小腸、胃、大腸、膀胱の5つ。と「三焦」(大静脈系)で五臓六腑

に、「気血水(津液)」を滞りなく巡らせることが健康を維持する秘訣と考えられています。

 

五臓六腑は表裏の関係で、

六腑は口からの食物を仕分けし、五臓に送り、不要なものを体外へ排出する働きをします。

五臓は送られてきた栄養を貯蔵や使用する働きをします。

 

薬膳では、五臓五腑のどこかに不調が出た時、五行の相性関係にある食材を料理に取り入れ献立を立てます。

五臓・六腑

五臓:肝、心、脾、肺、腎 六腑:胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦

《肝の働き》

 

生命エネルギー。気のバランスを調整し、全身に巡らせる役目。精神安定にも関係。

また、血を貯蔵する役目もあり、目や筋肉など必要な器官に供給し、胆汁を分泌し、

消化を助け、筋や健に栄養を与え関節を支える働きもしている。

●肝が不調のサイン→・目の疲れ、乾燥、視力の低下 ・爪の横筋(肝のダメージ)爪の縦筋(血の不足)

●青い野菜が効果的→・ほうれん草、小松菜、三つ葉など

●酸味が効果的→・いちご、キウイ、柑橘類、酢、梅干し

 

《心の働き》

最も重要で、神経や意識、思考をつかさどる役目。血を全身に送るポンプの役割で、全身に栄養を運ぶ。

●心が不調の症状→・不安、不眠、夢を多く見る、記憶力低下、他の臓腑にもトラブル、心拍数乱れる。

●心が不調のサイン→・舌の先の痛み、変化、味覚障害 ・顔色悪く、つやない。

●赤い食べ物が効果的→・赤身の肉、レバー、人参、クコの実など

●苦味が効果的→・ピーマン、ゴーヤ、菊花、緑茶など

 

《脾の働き》

食べ物を消化吸収し、全身に栄養を供給。老廃物を体外へ排出。内臓の位置を留める。

●脾が不調の症状→・消化不良、食欲不振、胃もたれ、食後の眠気、下痢、あざ、不正出血、鼻血。

●脾が不調のサイン→・口元に吹き出物、唇の色つや悪い。

●黄の食べ物が効果的→・イモ類、米、大豆、南瓜、トウモロコシなど

●甘味が効果的→・イモ類、黒糖、果物など ※白砂糖は避ける

 

《肺の働き》

呼吸、水分代謝を助ける。

●肺が不調の症状→・せき、喉、呼吸に異常、汗が出にくい、むくみ

●肺が不調のサイン→・鼻 鼻水、鼻づまり、臭覚異常 ・皮膚にも異常

●白の食べ物が効果的→・大根、白菜、かりん、ゆり根、もやし、梨など

●辛味が効果的→・ネギ、シソ、ニンニク、シナモン、山椒、生姜など

 

《腎の働き》

生命活動そのものをコントロール。体内の不要になった津液を膀胱に送り排出、

必要な水分は再利用の為全身に戻す役目。

●腎が不調の症状→・発育遅れたり、精力減退、骨祖そう症、白髪、老化現象、排尿障害、むくみ

●腎が不調のサイン→・耳 聞こえが悪い、耳鳴り ・排尿、流産などのトラブル

●黒の食べ物が効果的→・黒米、黒豆、黒ゴマ、昆布、ひじき、わかめなど

●かん味(塩味)が効果的→・海藻、えび、鮭など海でとれるもの

 

《肝の働き》

「氣」を全身に巡らせ「血」を供給を調節。

●肝が不調の症状→・かすみ目、疲れ目、目の充血、こむら返り、イライラ、不眠、のぼせ、ふらつき

         ・首や肩のこり、爪が割れる、優柔不断、眠りが浅い、お腹がはる、喉のつまり、

         ・頭痛、鼻水、花粉症、皮膚トラブル、食欲不振、疲れ、無気力

●肝が不調のサイン→・目や爪の症状、筋肉の症状、上半身にトラブル、ストレスから脾臓の低下 

●青(緑)の食べ物が効果的→・さやえんどう、キャベツ、あしたば、水菜、ほうれん草など


食材の五味・五性

五味:酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩味)

 

《酸味》---五臓は肝に関連

収れん作用、筋肉を引き締める、汗、尿の出過ぎを止める。

多汗、頻尿、下痢、不正出血などに有効

●食材---トマト、グレープフルーツ、梅、りりんご、みかん、酢など

 

《苦味》---五臓は心に関連

解毒作用、清熱作用、余分なものを外に出し、乾かす働き。

熱が出たとき、便秘などに有効

●食材---ゴーヤ、セロリ、ピーマン、ごぼう、緑茶、菊花など

 

《甘味》---五臓は脾に関連

脾胃の調和、痛み緩和、疲れ緩和、慢性疲労、虚弱に。

●食材---穀類、いも類、南瓜、人参、果物など

 

《辛味》---五臓は肺に関連

発散作用、流れを良くする働きで気や血の滞りを改善。

身体を温める効果

●食材---長ネギ、唐辛子、シソ、にら、生姜など

 

《鹹味》---五臓は腎に関連

塩味で固いものを柔らかくする作用、身体を潤す作用。

便秘やしこりの改善などに有効

●食材---わかめ、のり、昆布、アサリ、いか、かに、くらげなど

 

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五性:寒、涼、平、温、熱

 

《寒》 身体を冷し、鎮静、消炎作用

●食材---たけのこ、ゴーヤ、もやし、バナナ、あさり、かに、海藻類など

 

《涼》 寒より緩やかに身体を冷す

●食材---きゅうり、セロリ、トマト、なす、大根、みかん、豆腐、緑茶など

 

《平》 寒、涼でもない温、熱でもない、中間

●食材---穀物全般、人参、キャベツ、春菊、ぶどう、いか、豚肉、豆類、イモ類など

 

《温》 熱より穏やかに身体を温める

●食材---南瓜、ねぎ、生姜、えび、鮭、鶏肉、栗、桃、紅茶など

 

《熱》 身体を温め、興奮作用ある

●食材---羊肉、シナモン、胡椒、唐辛子など

 

バランスよく食べ、季節や体質、体調に合わせて食べることが栄養を効率良く取り入れられると言う薬膳の素晴らしさです。